研究概要 |
千葉県千倉町で季節毎に地下水試料の採取を行った。TCE汚染現場は帯水層が3層存在しており数十cm〜1m程度の難透水層で仕切られていることが先だって行われたボーリング調査で明らかになっている。帯水層はそれそれ,1%弱の水頭勾配を持っており東から西へ流れている。また,基盤の砂岩は,化石海水由来と思われる塩分とメタンガスを含んでおり,その影響は第3帯水層及び第・2帯水層に及んでいた。溶存酸素は自由地下水である第1帯水層では地表からの浸透によって分布していた。また,第2帯水層では地点No.4で10%高くそれより下流で減少した。第3帯水層では溶存酸素はほぼ0であった。また,栄養塩は硝酸塩が第1透水層とNo.4の第2帯水層で,100μM程度,他の第2,第3帯水層ではその十分の1以下であった。リン酸塩の濃度は第3帯水層で10μM近く溶存していたが,他は1μM以下であった。これらの環境パラメータのうち,季節変化が顕著であったのは,溶存酸素とメタンであった。いずれも地下水位との相関を示した。また,地下水位は降水量を反映しており,地下水位の上昇に伴って,動水勾配も上昇する傾向がみられた。これらのことから,メタン及び酸素はそれぞれ下層または表層からほぼ定常的に供給され,分布は地下水の流速によって決まることが示唆された。また,リン酸及び硝酸塩もそれぞれ同様と考えられた。MPN法によるメタン資化細菌の分布は第3帯水層では常に10^4程度存在しており,第1,第2帯水層は季節変化を示した。計数値の季節変化は水位の低下したとき,すなわち,メタン濃度が高いときに高くなる傾向を示した。メタン濃度との関連は,同時季の水平的な比較でも見られた。全菌数は10^5をはさんで一桁の範囲で変化したが,環境パラメータとの有意な関係は見いだせなかった。また,汚染TCEの分布とメタン資化細菌の分布とにも関係は見いだせなかった。
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