当該年度は、東南アジア地域での丸太輸出規制が日本市場へ与えた影響に関して研究を行った。 まず、日本の合板工場・繊維板工場・家具工場などへの聞き取り調査および資料収集を実施した。加えて、日本の合板および繊維板の需給に関する各種統計データの整理を行った。その結果、貿易面では東南アジア地域などからの合板輸入の増大に加えて合板用丸太輸入の減少が進んでいること、木材加工産業では合板用南洋材丸太価格の高騰や合板から繊維板への生産転換、合板企業の減少などのように合板産業に多大な影響の出ていることが分かった。 つぎに、日本を中心とする合単板用丸太・合板需給の計量経済モデルを構築し、その構造分析を行った。構築した需給モデルは7つの内生変数と7つの方程式からなる連立方程式モデルであり、二段階最小二乗法により1974年から97年までの年次データを用いて係数を推定した。その中では、特に丸太輸出規制の前後における供給構造変化を想定して政策ダミー変数を採用し、日本の合単板用丸太・合板市場における丸太輸出規制の影響を分析した。その結果、インドネシアにおける丸太輸出規制政策(1980年からの丸太輸出枠政策と1985年からの丸太輸出禁止政策)は日本への合板供給に正に影響し(増大させた)、サバ州の丸太輸出規制政策(1989年からの丸太輸出枠政策と1993年からの丸太輸出禁止政策)は日本への丸太供給に負の影響を与えた(減少させた)ことが明らかになった。 さらに、構築した合単板用丸太・合板市場モデルを利用して、丸太輸出規制による各経済主体の余剰変化を計算した。その結果、東南アジア地域における丸太輸出規制は東南アジア地域を中心とする合板産業に多大な利益をもたらしたことが明らかになった。その一方で、丸太輸出規制の費用を日本の合板産業が主に負担したことも分かった。
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