本研究は、ダイオキシン類の環境への負荷管理が困難な野焼きおよび小型簡易焼却炉における生成実態の解明を試みたものである。燃焼によるダイオキシン類の生成機構を解明する予備検討として、木材成分の代用品として市販の割り箸を未処理、熱水抽出処理、アセトン抽出処理、トルエン抽出処理した試料を作成しラボスケールでの燃焼実験装置を用いて、野焼きや小型簡易焼却炉の燃焼条件に極めて近似した条件にて単独で燃焼させた。その結果、未処理の割り箸を燃焼させた時のダイオキシン類生成量を100%とした場合、熱水抽出処理では34.2%、アセトン処理では18.7%までの減少が観察されたのに対し、トルエン抽出の場合では未処理の相違は認められなかった。従って、ダイオキシン類の生成は成分として含まれる水溶性無機塩化物に起因することが推察された。 次に、上記熱水処理割り箸と各種プラスチック(ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、発泡ポリスチレン(EPS))を混合焼却させた時のダイオキシン類生成量の比較を行った。その結果、PE、PP、EPSにおいてはコントロール(割り箸のみ)と比較して、その生成量に大きな差は認められなかったがPVCおよびPVDCをそれぞれ燃焼させた時には、コントロールの約15倍および92倍といった顕著なダイオキシン類の生成量が観察される結果となった。 以上、本研究によりダイオキシン類の生成量は無機塩化物よりもむしろ有機塩化物による影響が深く関与していることが示唆された。
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