本研究は、ダイオキシン類の環境への負荷管理が困難な野焼き及び家庭用小型簡易焼却炉における生成実態の解明を試みたものである。昨年度までにプラスチック類と木材との混合燃焼において塩化ビニル等の塩素系プラスチックの存在により、ダイオキシン類の生成量が増大することを明らかにしてきたが、さらにその生成量を飛躍的に増加する因子として銅といった金属触媒の存在下で塩化ビニル単独時と比較して、約3倍増加させることが明らかとなった。さらに銅の含有量が大きくなる程、その生成量の増加率も大きくなることが判明した。 次に、ダイオキシン類推定前駆物質として塩化ベンゼン、塩化フェノール、塩化ジフェニルエーテルを測定したところ、これら化合物(特に塩化ベンゼン及び塩化フェノール)の増加に伴い、ダイオキシン類も増加していることから、その生成機構はこれら前駆物質を経由して行われていることが推察された。 一方、家庭用小型簡易焼却炉を使用し、家庭から排出されるごみをモデル化し、ダイオキシン類の生成実態を調査した。その結果、枯れ葉、紙類及び木材の焼却でも排ガス1m^3N当たり、約60ngTEQのダイオキシン類が検出され、さらに塩素系プラスチック含有の場合ではその生成量が約40倍に増加した。 以上、本研究の成果としてはこれまで未解明であった自然燃焼下におけるダイオキシン類の生成機構を明らかにし、また、現在で未規制である家庭用小型簡易焼却炉からに排出実態について基礎的知見を与えたことである。
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