放線菌培養液中に分泌される凝集活性成分(バイオポリマー)を部分精製し、その性状について調べたところ以下のような知見が得られた。このバイオポリマーは、硫酸・フェノール法に対して陽性であり、ニンヒドリン反応には陰性を示した。また、蛋白質分解酵素処理とRNA分解酵素処理によっては、凝集活性の低下はほとんど観察されなかったが、DNA分解酵素処理によりその凝集活性が低下することが明らかとなった。以上の結果から放線菌が分泌するバイオポリマーはDNAである可能性が示唆された。このバイオポリマーのゲルろ過クロマトグラフィーの結果から、その分子量が数十万以上であることがわかっていることから、このバイオポリマーは比較的大きなDNAである可能性が高くなった。一方、このバイオポリマーの吸湿・保湿性について、天然保湿因子である尿素とD-ソルビトール及び湿潤成分であるグリセリンと比較検討した。その結果、このバイオポリマー吸湿・保湿能は、相対湿度の変化に依存しているものの、他の試料ほどその影響度は大きくなかった。このバイオポリマーの吸湿・保湿能についてまとめると、このバイオポリマーは、高湿度環境下においてもべとつくことがなく低湿度環境下においては高い吸湿能を示し、乾燥条件下においても保湿能を有する点で比較的優れた吸湿・保湿剤成分であると考えられる。 本研究により、放線菌が生産するバイオポリマーは、凝集能、吸湿能、保湿能の少なくとも三機能を備えていると考えられ、また、現在、問題視されている二時公害の恐れもなく安全で生分解性をも有していることから環境に優しい新規水処理剤となる可能性が示された。
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