研究概要 |
申請者はアコヤ貝の赤化と斃死の原因解明を目的として研究を展開し,これまでに以下のことを明らかとした. まず赤化原因物質の探索を行ない,黄色物質アロキサンチンを単離した.本物質は,アコヤ貝が捕食する微生物に見られる物質であった.これは健康体では代謝されているこの物質が,異常により蓄積されたと推察された. 次に斃死原因物質アコヤ貝自身の観測を行ったところ,赤化したアコヤ貝においては血管周辺での異常と血リンパ球での変性が観測された.さらに,この血リンパ球の崩壊はネクローシス様ではなく,アポトーシス様であることも判明した.そこでこの血リンパ球の変性は,赤化した後に生じるのではなく,血リンパ球の変性に対して二週間程度遅れて発生することが明らかとなった.このことから,血リンパ球の変性活性を指標として精製を進めた.まず,赤化アコヤ貝339個体を用いて精製を進めた.この物質は精製途中において分解することが確認されており,今後さらに注意深く精製を進めて行く.本年度はさらに赤化アコヤ貝2500個体を用いて抽出を行っている.また,酢酸エチル層から白色混合結晶が得られてきた.この結晶は健康体と較べて16倍程度得られる.NMRスペクトルの解析より脂質様物質であると推測された.これにより赤化アコヤ貝における代謝異常(栄養障害)が強く支持されると考えている.現在,高速液体クロマトグラフィーを用いて分離精製を進めると共に,アコヤ貝異常の簡便な検出方法を検討している. 急性毒性物質と,細胞毒性を有する物質についても精製を進めている.現在抽出を行なっている2500個体を用いることにより,それらが得られるものと考えている. 以上の結果については,1999年3月に日本化学会春季年会,日本魚病学会春季大会において発表する.
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