蛋白質などで修飾したプローブを使い、試料上の相互作用や吸着のある位置をマッピングする技術を確立した。具体的には、レクチンを用いて組織上の生理機能的に重要な部位に特異的に発現している糖鎖を高分解能でマッピングできることを示した。また、カンチレバーのバネ定数を、その熱振動の大きさから検定する方法を確立しつつある。この技術は、カンチレバー・プローブの微細な振動の高精度な測定をともなっており、ここで得られた技術と先のマッピングの技術を組み合わせていくことで、物性マツピングの方法を次年度に確立する。今までの原子間力顕微鏡(AFM)によるフォース測定が試料を引き離す距離だけで制御されていたのに対し、引き離したときに掛かる力を検出して引き離す程度を調整できるようにした。この方法は蛋白質の2点間を引っ張って、どのように振る舞うかを定量的に調べる上で重要な技術になる。蛋白質1分子をいろんな程度にまで変性してはそこから巻き戻していく実験をするためには、分子にかける力をどこまでにするか決めて制御していく必要がある。現在モデル物質としてポリエチレングリコールを使い、この場合は単純なランダムコイルであることが期待されるが、その延伸・巻き戻しを試している。 得られたAFMのフォースカーブの解析については、既に行っているカーボニックアンヒドラーゼ(CAB)を通常のフォースカーブを使って引き延ばしたデーターを使って検討しており、データーを積算していくことで、3段階以上の段階を経て蛋白質が1本のひもにまで引き延ばされていくことがわかってきた。ただし、CABを人工的に2個つなげた蛋白質でのフォースカーブの検討から、1番最初にカンチレバーに掛かつてくる力は基板表面と探針表面の吸着である可能性がある。
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