i) Gal:→3硫酸転移酵素の精製 Gal:→3硫酸転移酵素のcDNAクローニングを行うにあたり、まず、本酵素の精製を行った。ブタ大腸(6kg)から粘膜層をかき取り、膜画分を調製した。この画分からTritonX-100を用いて酵素を可溶化し、Sephadex G-200ゲルろ過、ヒドロキシアパタイト、ConA-Sepharose、ブタムチン-Sepharoseカラム等により約10万倍にまで酵素を精製することができた。平成11年度はSDS-PAGE上で本酵素に該当するバンドを同定し、部分アミノ酸配列分析及びcDNAの単離を行う予定である。 ii) GlcNAc:→6硫酸転移酵素の性質 本研究者はヒト大腸における本酵素活性が、GlcNAcβ1→2Manを基質としたとき癌化に伴い減少することを明らかにした。この結果は高分子型癌の例について得られたものであるが、本年度新たに頻度は低いものの悪性度の高いムチン型大腸癌において高頻度に出現するGlcNAc:→6硫酸転移酵素が存在することを見い出した。両酵素活性は基質特異性が大きく異なっており、ムチン型癌に出現する酵素が比較的広い基質特異性を示すことが推測された。これら少なくとも2つのGlcNAc:→6硫酸転移酵素のcDNAクローニングについては平成11年度においてdifferential display法などによるcDNAの単離を計画している。 iii) GlcNAc-6-O-硫酸:β1→4ガラクトース転移酵素の同定 本研究者はヒト大腸粘膜中にGlcNAc-6-O硫酸に特異的に作用するβ1→4ガラクトース転移酵素を見い出した。本酵素は中性付近で最大活性を示し活性発現に2価カチオンを要求する。GlcNAc-6-O-硫酸やSO_3-→6GlcNAc-Man_3-Fuc-GlcNAc_2は良い基質となるが、GlcNAcやGlcNAc_2-Man_3-GlcNAc_2、GlcNAc-Gal-Glcなどへは弱い活性しか示さなかった。本酵素はブタ大腸粘膜にも存在し、UDP-ヘキサノールアミン-Sepharose、アシアロ-ガラクト-オボムチン-Sepharoseクロマトグラフィーにより約2万倍まで精製された。平成11年度は本酵素のcDNAクローニングを目指す。
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