I)大腸粘液癌におけるGlcNAc:→6硫酸転移酵素 本研究者は酵素学的手法により、ヒト大腸癌において2種類のGlcNAc:→6硫酸転移酵素が存在することを明らかにした。一方はコア2及びGlcNAcβ1→2Man糖鎖を良い基質とし、癌化に伴い酵素活性が減少する酵素であった。もう一方は、コア2、コア3、GlcNAcβ1→2Man、GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glcなどの幅広い基質特異性を有し、粘液癌もしくは粘液蓄積が多く見られる分化型癌において酵素活性が見い出される酵素であった。後者の酵素の発現は粘液癌の診断に応用できる可能性を示しており、現在cDNAクローニングを進行中である。 ii)GlcNAc-6-O-硫酸:β1→4ガラクトース転移酵素の脂質要求性 本研究者はヒト及びブタ大腸粘膜中にGlcNAc-6-O-硫酸に特異的に作用するβ1→4ガラクトース転移酵素を見い出している。本研究者は本酵素を精製していく過程において酵素活性が消失する現象を見い出し、かつD-スフィンゴシンを反応系に加えることで酵素活性が回復することを明らかにした。この脂質要求性はD-スフィンゴシン特異的でリン脂質及びセラミドでは活性の回復は見られなかった。この結果から、本酵素はD-スフィンゴシンの一級アミノ基を認識していることが考えられる。
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