申請者は神経系におけるガングリオシドの機能の解明を目的として、抗ガングリオシド抗体で免疫沈降する際に共沈してくる蛋白質の同定を試みている。昨年度、抗ガングリオシドGD3抗体でsrcファミリーチロシンキナーゼLyn、カベオリンが共沈し、さらに小脳初代培養細胞表面上のGD3を抗GD3抗体でクロスリンクするとLynが活性化し80kDa蛋白質のチロシンリン酸化がおこることを報告した。今年度は、シグナル伝達におけるスフィンゴ糖脂質ミクロドメイン/カベオラの役割を解析する一環として、小脳初代培養細胞における非受容体型キナーゼLynと会合する受容体分子の検索を行なった。 ラット小脳初代培養細胞を^<35>Sメチオニンで代謝標識し、抗GD3抗体で免疫沈降したところ分子量135kDaの蛋白質(p135)が共沈した。^<125>I表面標識されること、PI特異的ホスホリパーゼC処理で培地中へ切り出されることから、GPIアンカー型の膜蛋白質であることがわかった。抗体による再免疫沈降の実験からp135はイムノグロブリンスーパーファミリーに属し神経突起伸長活性を持つ神経細胞接着分子TAG-1であることがわかった。次に小脳初代培養細胞のTAG-1を抗TAG-1抗体でクロスリンクしたところLynが活性化し80kDa蛋白質のチロシンリン酸化がおこった。さらにTAG-1およびLynはショ糖密度勾配遠心でスフィンゴ糖脂質ミクロドメイン/カベオラ画分に回収された。以上の結果は、TAG-1の接着シグナルがスフィンゴ糖脂質ミクロドメイン/カベオラにおいてLynを介して細胞内へ伝達されることを示している。
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