蛋白質や核酸などの生体高分子の立体構造は、機能発現の機構を考える上で重要である。UDP-Glcピロホスホリラーゼ(UDP-GPP)は生物界に広く分布する糖代謝に重要な役割を果たしている酵素であり、本酵素はUDP-Glc(ウリジン2リン酸グルコース)からPPI(無機ピロリン酸)へUMP基を転位する反応およびその逆反応を触媒している。本研究で用いるジャガイモ塊茎UDP-GPPは52kDaの単量体蛋白質であり、Native型酵素の立体構造は大阪大学たんぱく質研究所において2.2Å分解能で明らかにされている。本研究課題では放射光を利用する時間分割X線構造解析法によりUDP-GPPの酵素反応に関わる基質結合の各ステップの様子や寿命の短い反応中間体の構造をミリ秒のオーダーで電子密度の変化としてとらえ、酵素反応を時間軸も含めた4次元の構造として議論することを目的としている。まず本年度は基質フリーのNative型酵素の結晶を使って白色X線照射に対する結晶の挙動を確認した。時間分割X線解析法による回折強度データの質をチェックする目的で、高エネルギー加速器研究機構、放射光研究施設BL-18Bに於いて回折強度データの収集を行った。その結果、強力な白色X線の照射により放射線損傷を起こして2.8Å分解能程度のデータしか収集できないことが判明した。現在までに2.8Å分解能でのデータの完全性を高めるために露光時間100msecで約40枚のX線イメージデータを収集している。現在、すベてのイメージデータを使って完全なデータセットにするために処理を進めているところである。本結晶での実験と並行して白色X線を用いてさらに高分解能の回折を与える結晶化条件の検索も併せて行っている。
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