研究概要 |
実験に用いたのUDP-GPPは生物界に広く分布する糖代謝に重要な役割を果たしている酵素で、UDP-GLC(ウリジル2リン酸グルコース)からPPI(無機ピロリン酸)へUMP基を転移する反応および、その逆反応を触媒している。本研究で用いたのはジャガイモ塊茎由来のUDP-GPPで分子量約52KDAの単量体蛋白質である。NATIVE型酵素の立体構造は、すでに大阪大学蛋白質研究所において2.2A分解能で明らかにされている。まず、時間分割X線解析法による回折強度データの質をチェックする目的で、基質フリーのNATIVE型酵素の結晶を用いて、2.8A分解能のデータを得ることが出来た。白色X線によるデータ収集は高エネルギー加速器研究機構・放射光実験施設(BL-18B)において行った。大型イメージングプレート16枚を使用し、100msecのX線露光時間でデータを収集した。16枚のイメージングプレートを使用したことにより、測定データは全反射の68.1%まで測定することが出来た。あわせて多数の回折点を収集したことによりデータの多重度が増し、正確な波長校正曲線を見積もることが可能となった。Index,intlaue,lauenormの一連の処理ソフトを使いデータの処理を行ったところ、データの精度を示すR-mergeは9.2%であった。この回折データに対して構造精密化プログラムCNSをもちいて精密化計算を行ったところ、単色X線のデータと遜色ない電子密度を得ることができた。本実験により100msecという極めて短い短時間のデータ測定にもかかわらず、蛋白質の構造解析が可能であることが示された。我々は、フローセルによる反応開始を念頭に置いてUDP-GPPの基質であるUTPのソーキングを試みた。30MUTP複合体結晶を得ることが出来たので、本結晶を使って白色X線と単色X線によるデータ収集を試みた。白色X線によるラウエ法では結晶性の低下に伴い回折点の形状が悪く解析に用いることは出来なかった。本実験により、白色X線によるデータ収集は基質を含む結晶性の低下した条件では困難であることが確認された。
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