近年、小胞体内の折りたたみ異常蛋白質は、分子シャペロンにより識別され、細胞質へ逆行輸送後、ユビキチン・プロテアソームにより分解されることが明らかになり、この機構は小胞体関連分解と呼ばれる。我々は、血液凝固制御因子であるプロテインCは抗血栓薬(ワルファリン)下でγ-カルボキシル化不全になると小胞体関連分解されることを明らかにしている。また、その過程においてプロテインC糖鎖のマンノーストリミングが分解の引き金として重要であることを見いだした。本研究では、プロテインCの小胞体関連分解における糖鎖のプロセシングの重要性を調べる目的で、まずツニカマイシン処理により糖鎖を除去したプロテインCの小胞体関連分解を調べた。その結果、糖鎖のないプロテインCは細胞内で分解されるものの、プロテアソーム阻害剤存在下でも分解が阻止されないことを見いだした。これは、糖鎖を除去したプロテインCは別経路による分解される可能性を示唆している。また、プロテインC中の4箇所(97番、248番、313番、329番)のうち、生理的に欠失がみられる329番をGlnに固定し、他の3箇所をそれぞれGlnに置換した2Q変異体を用いて、分泌や小胞体関連分解に影響する糖鎖を調べたところ、Asn97→Gln変異体ではビタミンK存在下でも分泌障害になることが明らかになった。また、マンノーストリミングを阻止するキフネンシン存在下での小胞体関連分解阻害効果がAsn313欠失体では小さいことから、97番糖鎖はプロテインCの分泌に重要で、313番のマンノーストリミングが小胞体関連分解のトリガーとして重要であると結論した。
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