研究概要 |
本研究では、nNOS,eNOS,iNOSの各アイソフォームのカルモジュリン結合ドメインに着目し、このドメインと酸性リン脂質、カルモジュリンなど各種エフェクターとの相互作用、リン酸化によるその調節機構を解明することを目的としている。また、NOSのリン酸化は、NO産生を調節する重要な機構の一つであるがその詳細は明らかでなく、各NOSアイソフォームのリン酸化解析が必要である。本年度は、各NOSアイソザイムのPKCによるリン酸化について明らかにした。血管内皮細胞型NOS(eNOS)では、大腸菌で発現させたeNOSはin vitroでPKCによりリン酸化された。部位特異的リン酸化抗体及び質量分析の結果からPKCによるリン酸化部位はカルモジュリン結合ドメインの中のThr497であることを同定した。ウシの血管内皮細胞から免疫沈降したeNOSは、リン酸化されたThr497を認識する部位特異的リン酸化抗体により反応し、さらにPKCのアクチベーターであるPMAによりその反応性が増加した。更に、eNOSの活性は、PKCによるリン酸化によりカルモジュリンと結合できなくなるため減少することが分かった。以上の結果から、eNOSの活性は細胞内でPKCによりnegativeに調節されていることが明らかとなった。同様に、神経型NOS(nNOS)についてもPKCによりリン酸化されることを示した。一方、誘導型NOS(iNOS)はPKCでリン酸化されず、別のキナーゼが関与していることが推測された。
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