腫瘍壊死因子(TNF)のアポトーシス誘導作用の細胞内シグナル伝達系における細胞質ホスホリパーゼA2(cPLA2)とMAPキナーゼファミリー各酵素の役割およびそれらの相互関係を明らかにする目的で、CPLA2を欠損することでTNFに対して耐性を獲得したC12細胞株とその親株でTNFに対して感受性を示すL929細胞株でのTNF刺激した際のMAP活性化の差異を検討した。その結果、両細胞株においてMAキナーゼ、JNK、p38MAPキナーゼのいずれも一過性に活性化され、これら酵素の活性には差が認められなかった。このことから、(1)cPLA2はMAPキナーゼファミリー各酵素の上流に位置する、(2)cPLA2とMAPキナーゼファミリー各酵素は独立したシグナル系を形成している、などの可能性が考えられ、この点の解析は次年度の課題として残った。 また、TNF感受性株と耐性株におけるcPLA2発現量の際に着目した結果、その下流で機能しているアラキドン酸代謝系酵素の発現量の差異についても比較検討した。その結果、TNF刺激したL929細胞ではCOX-2の発現誘導が認められたが、C12細胞においては全く認められなかった。さらにセラミドで刺激した際においても同様にL929細胞のみにCOX-2の発現誘導が認められた。セラミドはTNF刺激後に細胞内で生成しシグナル分子として機能する低分子化合物であることから、「TNF→受容体→cPLA2→セラミド→COX-2発現上昇→→→アポトーシス誘導」というアポトーシスのシグナル伝達経路が存在する可能性が示唆された。
|