研究概要 |
ビタミンAの機能発現機構として、申請者が見い出した「レチノイド-線溶-TGFβシステム理論」の詳細を解析し、その生理的意義について検討する為に、1. 核内レチノイン酸受容体(RAR)がGC-richな領域(GC-box)に結合する転写因子Splの作用を促進しPk遺伝子の転写を促進するという発見に基づき、ビタミンAによるTGase等他の遺伝子の発現促進機構も同様に行われるかどうか、またRARSpl相互作用の詳細について、分子細胞生物学的手法を用いて解析したところ、RARはSplのGC-boxへの結合を高めることによりuPA遺伝子を始め、TM、TGase等GC-boxを有する遺伝子の転写を促進しており、他のグループからの報告も併せるとこの現象が核内受容体ファミリーに共通の転写活性化機構であることがわかってきた。今後は、RARによる転写活性化能とSplによる転写活性化能の寄与の割合、リガンド依存性、GC-boxの配列特異性について調べていく予定である。 2. 肝線維症に伴い肝臓に生成する内在性新規ビタミンA誘導体の構造を調べたところ、肝臓が傷害を受けると肝星細胞に蓄えられていたビタミンAの代謝が高まり、all-trans-レチノイン酸や新規活性代謝産物の9,13-di-cis-レチノイン酸が生成し、肝星細胞に働いて「RARへの結合・活性化→Splの転写活性促進→PA遣伝子の発現促進→細胞表面プラスミシ活性の上昇→TGF-β産生・活性化の誘導→コラゲンの産生促進、及びコラーゲナーゼの産生抑制、肝実質細胞の機能低下」という分子機序により肝線維症・肝硬変を促進しており、プラスミン阻害剤によりTGF-βの遊離活性化をブロックするとそれ以降の反応、即ち肝線維症・肝硬変促進が抑えられることをin vitro組織培養系において証明した。今後は同様な証明をブタ血清投与ラット肝線維化モデルにおいて行う予定である。
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