「発生段階特異的脳型26Sプロテアソームの同定と機能解析」 最近、ユビキチン-プロテアソーム経路による時間、空間特異的な蛋白質分解が細胞増殖や体軸形成、神経分化などの発生現象に密接に関与していることが明らかになりつつある。分解に導かれるべき基質の選別は、第一にユビキチン化のステップで調節されておりユビキチン化の制御についてこれまで多くの報告が発表されている。一方、プロテアソーム(総計40種を越えるサブユニットから構成された多成分プロテアーゼ複合体)はこれまであらゆる組識に普遍的に発現する構成的なプロテアーゼであると考えられてきた。本補助金受領中、研究代表者のグループはマウス初期胚で時期あるいは組織特異的な発現パターンを示す初めてのプロテアソーム遺伝子として3種類のユビキチンレセプター(UbR)サブユニットを単離同定した。普遍的な発現パターンを示すUbR1とは対照的に、UbR5はmRNA、蛋白質ともに発生の進行に伴って発現が増大し17日胚で最高となる。興味深いことに、UbR5蛋白質はマウス胚の脳特異的に検出され、脳以外の組織および成体の脳には検出されない。このことは胚脳に特異的なユビキチン依存的蛋白質分解経路が存在していることを示唆している。UbR5を細胞内に過剰発現させると、核の倍数化を伴う細胞分裂停止および分化などを誘導し、UbR1とは全く異なる効果を現すことが明らかとなった。これらの結果はユビキチンレセプターサブユニットUbR1とUbR5とは異なる機能を有していることを示している。これらユビキチンレセプターのKOマウスの作成と解析が東京都臨床医学総合研究所の田中啓二部長との共同研究で進行中であり、まもなくホモ体での異常について明らかになる予定である。
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