計画では1)ファラオニスフォポロドプシン(ppR)発現系の改良、2)組み替えppR精製方法の確立、3)変異体ppRの作製、を挙げた。 1) 検討したところ、現在市販されている発現システムについては現行のpETシステムが最善である可能性が高いことが示唆された。また、発現誘導時に大腸菌がその産生能を持たないレチナール(ppRの発色団としてアポタンパク質内に組み込まれる)を発現誘導物質であるIPTGと同時に添加することが効率のよい発現に役立つことがわかった。アポタンパク質の発現と同時にレチナールが分子内に組み込まれることで、発現タンパク質の安定化がはかられることがその理由として考えられる。 2) 水可溶化に際しては、従来用いてきたオクチルグルコシドより、ドデシルマルトシドのほうが可溶化力、活性化力ともに強いことがわかった。可溶化後、イオン交換樹脂であるファルマシア社のDEAEセファセルを用いたカラムクロマトグラフィーを行なうことで、部分精製が可能となった。SDS-PAGE、クーマシー染色レペルではメジャーなバンドとして認識される程度だが、その吸光スペクトルは極大 500nm付近を中心にきれいな釣り鐘型を描き、470nm付近の特異的なスペクトルの肩も確認できる程度に光学的にはかなりの精製度が得られた。 3) ppRが他の類似タンパク質と異なる点は吸収波長と光反応速度である。前者については、類似タンパク質で得られている知見をもとに変異体を作製したが期待された吸収波長の変化はみられなかった。これはその一次構造に大変高い類似性があるにもがかわらず、レチナールタンパク質問ではそのレチナール近傍構造に吸収極大を変化させるに十分な構造上の違いを有する可能性を示唆する。後者については、活性中心部分のアミノ酸残基をほかの類似タンパク質と同一のものに置換したときにその光反応速度が若干だが速まることがわかった。これは光センサーであるppRにも他の類似タンパク質に見られるイオンポンプの能力を保持している可能性を示唆する。
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