本研究の目的は蛋白間における電子移動反応と複合体形成による蛋白構造変化の相関を明らかにすることである。そこで10年度には試料蛋白質の抽出、精製と複合体形成が蛋白質の活性中心近傍に及ぼす効果を可視光励起の共鳴ラマン分光法によって検討した。 1. 蛋白間電子移動反応にたずさわるいくつかの金属蛋白質について精製等を行い、本研究を遂行する上で必要となる試料の調製を行った。 2. 共鳴ラマンスペクトル測定のための光源として可視光の連続発振レーザーを用い、試料蛋白質単体および複合体の共鳴ラマンスペクトルを測定した。その結果以下の知見を得ることに成功した。 (1) ヘム酵素のチトクロームP450cam一酸化窒素結合体について電子供与蛋白質であるプチダレドキシンとの複合体形成の効果について調べた。その結果チトクロームP450camのヘム鉄と一酸化窒素の間の伸縮振動が複合体形成によって大きく変化することを見い出した。このことからチトクロームP450camは複合体形成によって活性中心近傍の構造が大きく変化することが明かとなった。 (2) チトクロームP450cam酸素結合体の共鳴ラマンスペクトルを測定し、Fe-O-Oの変角振動モードの帰属にはじめて成功した。11年度はこの帰属をもとに、上記(1)の結果も考慮してチトクロームP450camのFe-O-Oの変角振動モードに対するプチダレドキシンとの複合体形成の効果等についても検討する予定である。
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