本研究の目的は蛋白間における電子移動反応と複合体形成による蛋白構造変化の相関を明らかにすることである。そこで複合体形成が蛋白質の活性中心に及ぼす効果を主に共鳴ラマン分光法によって解析した。その結果以下の知見を得ることに成功した。 1.ヘム酵素のチトクロームP450camの一酸化炭素結合体について電子供与蛋白質であるプチダレドキシンとの複合体形成の効果について調べた。その結果チトクロームP450camのヘム鉄と一酸化炭素の間の伸縮振動が複合体形成によって大きく変化することを見いだし、活性部位近傍の構造が大きく変化することを明らかにした。 2.上記の結果と関連してチトクロームP450camと複合体は形成する電子供与体とはならないチトクロームのb5の効果についても検討した。その結果1.で見られた変化はプチダレドキシン特有の効果であることを見いだした。 3.チトクロームP450camと複合体を形成したプチダレドキシンの活性部位の構造を磁気共鳴法で調べたところ、ヘム鉄のスピン状態がプチダレドキシンの活性部位に影響することを見いだした。 4.蛋白間の複合体形成が機能発現に重要だと考えられている光受容黄色蛋白について、共鳴ラマン分光法を用いてその反応中間体の構造を決定することに成功した。
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