研究概要 |
吉田らの方法に準拠して、V1-ATPaseの回転の観察を行うために、遺伝子操作により以下の改変を行う必要があった。 1)A.Bサブユニットに存在する、4つのシステイン残基をセリンに置換する。 2)AサブユニットのN末端にHis-tagを導入する。 すでにV1の発現系を確立していたので、これに異変導入を行うことにした。 当初、クンケル法で変異導入を試みたが、うまくいかなかった。T.thermophilusの遺伝子は極端にGCリッチなので、室温でのポリメラーゼ反応がうまく行かなかったのが原因と考えている。 次に、PCRを用いて、変異導入を行ったところ、必要な全ての箇所に変異を入れることに成功した。DNAシークエンシングにより、変異の導入を確認した。 変異導入されたmutant V1をNi-NTAカラムで精製した。菌体20gから、高度に精製された約1mgの酵素が得られた。比活性は野生型のV1とほぼ同じであった。Cysの除去やHistagの導入はATPase活性に影響しないことがわかった。次に同様の方法で、ローターサブユニットである、ガンマにシステイン残基を導入したmutant V1を5種類作成した(ガンマサブユニット58,100,116,120,144,163のセリン、もしくはアラニンをシステインに置換)。 蛍光化された、アクチン線維をローターサブユニットに結合させるためには、ガンマのシステイン残基をNEM-ピオチン化する必要がある。それぞれのmutant V1のピオチン化効率を調べたところ、163のシステインが比較的反応性が良いことがわかった。 現在、このmutant V1を用いて回転の観察をおこなっている。いまのところ、明確な回転を観察できていない。
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