ラン色細菌由来の光回復酵素については、その大量発現系が東北大学の安井とオランダエラスムス大学のエーカーによって確立されており、東北大学加齢医学研究所において複合体結晶化実験に必要な量(約100mg)の酵素標品の精製を行った。また損傷DNAオリゴマーについてはその塩基配列の並び方が重要であるため北海道大学の大塚らと塩基配列の設計を行い、ピリミジン二量体を含んだオリゴヌクレオチド標品の提供を受けた。ラン色細菌の光回復酵素とチミン二量体を含んだDNAオリゴマー分子(13塩基対)との共存下、この両者の複合体の結晶化条件を検討した。電気泳動の手法を用いて光回復酵素とDNAオリゴマー分子の結合していることを確認した結果、その混合比がDNA分子を過剰にすることで、確実に複合体を形成することがわかった。酵素:DNA=1:1.5の条件で溶液を混合した後、沈殿剤として硫酸アンモニウムを用いた場合に針状の単結晶が得られた。この結晶を回折実験に充分な大きさに成長させた後、高エネルギー加速器研究機構でX線回折データ収集を行った。現在、光回復酵素と損傷DNAオリゴマーの複合体のX線構造解析を進めている。また、原子レベルでの酵素とDNA分子の相互作用を観察し、酵素の損傷DNAの認識機構を解明する事を目的として、Spring-8のシンクロトロン放射光を用いてNative酵素のより高分解能のデータ収集を行い、1、7A分解能の回折データ収集を行うことができた。
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