チトクロム酸化酵素は、チトクロムcから電子を受け取って分子状酸素を水にまで還元すると共に、プロトン能動輸送を行い、ATP合成に必要なエネルギーを創り出している。2.8Å分解能での結晶構造から酸素結合部位のヘムa3とCuBの近傍でCuBに配位しているHis240とTyr24が、翻訳後修飾によって直接結合した構造が見つかった。この構造が活性中心と繋がっているため、翻訳後修飾の精密な構造を確定することは本酵素の反応機構を理解する上で極めて重要なことである。本研究では、高分解能でのX線結晶構造解析を行い、His240-Tyr244の精密な構造を決定する。 チトクロム酸化酵素結晶には、X線を2.0Å分解能の高分解能まで回折する結晶があるので、X線による損傷を押さえ、高精度で高分解能の回折強度データを収集するために、低温下でのX線回折実験を行った。本年度は、低温下でのX線回折実験を行うために、結晶を傷めることなく凍結する方法を検討し、高分解能の回折強度データを収集した。凍結方法の検討では、不凍溶液の検討と冷却方法の検討を行った。結晶を傷めないために、不凍溶液のグリセロール濃度を30%まで徐々に上げることが重要であった。冷却方法は、液体窒素の噴霧下で急速冷却する方法が適していた。X線回折実験はSPring-8のBL41XUで行った。その結果、完全性が94.9%、重複数が4.1、R-mergeが7.5%の2.0Å分解能の良質な回折強度データを収集した。
|