申請者はこれまでにシカゴ大学とESRFのグループと共同で、ESRF/ID9において一酸化炭素結合型ミオグロビンのナノ秒時間分割結晶回折実験を行い、結晶にパルスレーザー照射後、数ナノ秒からマイクロ秒オーダーにわたる結晶中での構造変化を捕らえることに成功している。この結果を踏まえて、本申請では一酸化炭素結合型ヘモグロビン結晶を試料として、ナノ秒パルスレーザーで励起後、数ナノ秒から数ミリ秒領域で起こるヘモグロビン分子の構造変化を時間分割的に捉える実験を計画した.本申請では以下の3点を目的課題として設定した。 1. ヘモグロビンのR-T構造変化が配位子の結合・解離によって引き起こされる分子論的メカニズムを明らかにする。 2. R型とT型における配位子の親和性の違いがどのような構造要因によるのかを明らかにする。 3. αとβサブユニットの非等価性が配位子結合とどのような関係にあるのかを明らかにする。 以上の課題について、まず課題1については結晶中のCOの解離率をコントロールするためにおもに低温でのR型とT型ヘモグロビンのCO光解離型結晶の構造解析を進めている。この実験に必要な光学部品の購入に消耗品費を充てた。課題2、3についてはESRFでの実験を継続して行なっており、実験打ちあわせ旅費に海外渡航費を充てた。T型ヘモグロビン結晶については、ナノ秒時間分割X線結晶構造解析に成功しており、光解離後数ナノ秒後における中間体構造をとらえることに成功している.現在、投稿論文作成中である。
|