研究概要 |
RNAワールドから現在のDNA/タンパク質ワールドへの変遷にあたって、まずRNA/タンパク質ワールドを経たと考えられる。本研究では、この過程を実験的に再現する意味で、RNA酵素をRNA-タンパク質複合体酵素に人工的に改変することを目的として、以下の2つのアプローチを検討している: (1)RNA酵素のin vitro selection法による、RNA-アルギニン、およびRNA-ポリペプチド複合体酵素への進化実験。 20ヌクレオチドからなるランダムなDNA配列の中からRNAのリン酸ジエステル結合を切断するDNA酵素のセレクション・サイクルを確立した。さらに、本選択系を用いて、アルギニンが存在する条件、および、存在しない条件でのRNA切断活性を持つ配列の選択を行った。5ラウンドのセレクション後、活性配列の濃縮が確認できたため、引き続きセレクションを行っている。今後、同定したDNA酵素によるRNA切断活性のアルギニン依存性について検討する。 (2)生体内スクリーニング法を用いたRNA酵素のRNA-ポリペプチド複合体酵素への進化実験 我々が開発したRNA結合ペプチドのコンビナトリアル・ライブラリーからのスクリーニング法(Harada and Frankel,1997)を用い、直接ハンマーヘッド(HH)、ヘアピン・ライボザイム等の活性の向上に結びつくポリペプチドのライブラリーからの同定を目的とする。RNA酵素活性は、Fujitaらによって開発された検出系を利用する(PNAS,94:391-396)。本研究期間は、レポーター遺伝子としてカナマイシン耐性遺伝子であるNPT IIを用い、活性なHHライボザイムと不活性なライボザイムとをはっきり識別できることを確認した。また、これらの実験に用いるランダム・ペプチド・ライブラリーをRNA結合能の観点から最適化を行った。
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