研究概要 |
筋収縮において、リアノジン受容体は神経後膜からの刺激を受け、筋小胞体からCa^<2+>イオンを放出する。このCa^<2+>チャネル活性は、細胞内の様々な因子により制御されている事が最近分かってきた。線虫リアノジン受容体は第5染色体のunc-68/ryr-1遺伝子にコードされ、運動不良のe540, x14変異と麻酔薬ケタミンに応答異常を示す変異kh30変異の変異部位が明らかにされている。このうちkh30変異はPKCによる推定リン酸化部位のアミノ酸置換であり、強い親水性領域に位置している事から、kh30変異部位の周辺は他の分子と相互作用している可能性が高い。 私はリアノジン受容体の活性制御に関わる新規の蛋白質を同定する目的で、酵母の2-ハイブリッド系を用いて、線虫リアノジン受容体と相互作用する蛋白質を探索した。探索に用いた領域は(1)ヒト悪性高熱症の変異が集中するN末側領域、(2)線虫kh30変異の周辺領域の2カ所で、pGBDプラスミドを用いてGAL4-DNA結合領域との融合蛋白質をそれぞれ作製した。次にGAL4転写活性化タグと融合させた線虫・cDNAの発現プラスミドライブラリーと共に宿主菌(PJ69-4A株)に導入し、栄養要求性を指標に陽性クローンを選択した。 陽性クローンのDNA塩基配列を調べてコードされる蛋白質を調べた結果、(1)の領域とは核小体蛋白や転写因子様の蛋白質を含めた7種の蛋白質が相互作用することが分かった。同定した蛋白質の細胞内局在は現時点では不明であるが、筋収縮における機能的相関に興味が持たれる。(2)の領域とはEGFドメインを持つ3種の蛋白質が選択的に相互作用した。リアノジン受容体の活性制御にEGF受容体様の蛋白質が関わっているのかも知れない。 現在、これらの蛋白質をコードする遺伝子の発現組織を調べている。発現パターンがリアノジン受容体のそれと一致すれば、機能的相関が期待される。
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