Directed evolution(進化分子工学)により、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのβ-分枝鎖アミノ酸に対する触媒効率が、野生型酵素と比較して、約200万倍増大した変異型酵素を得た。進化した酵素には、計17アミノ酸残基に変異がみられた。興味深いことに、その17残基のうち、基質と直接相互作用が可能な位置に存在するものは1残基のみであった。他の残基に関しては、どのような機構で基質結合に影響を与えるのかは全く不明であった。そこで、進化した酵素とバリン類似物質との複合体の構造をX線結晶解析により調べた。その結果、17残基の変異により ・酵素のドメイン構造とサブユニット間の配置が変化している。 ・それにより、基質結合部位を含む活性部位の構造が変化している。 ことが判明した。 変異残基・構造変化・活性変化の間の関係を詳しく解析するために、 ・変異残基の多くが立体構造上3つのクラスターを形成していることに着目し、各クラスターを様々な組み合わせで持つ全8種の変異型酵素を作製した。 ・各変異型酵素の活性等、酵素学的諸性質を調べ、野生型酵素やATB17と比較した。 ・各変異型酵素の構造をX線結晶解析により調べ、野生型酵素やATB17と比較した。 その結果、定向進化の過程で導入された変異が、どのような機構により本酵素のβ-分枝鎖アミノ酸基質に対する活性を上昇させるのかが、明らかになりつつある。
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