研究概要 |
出芽酵母には半数体あたり約150コピーのリボゾームRNA(rRNA)反復遺伝子が存在する。申請者らの最近の研究で、rRNA遺伝子間に存在するDNA複製阻害活性に必須なFob1遺伝子がそのコピー数の調節に関わっていることが判明した(Kobayashi et al.Genes &Development,1998)。そのことから推定される調節のメカニズムとしては、複製阻害の結果生じた複製中間体の露出した一本鎖DNA部分がヌクレアーゼ等により切られ、2本鎖切断を生じ、それがその前後に多数存在するrRNA遺伝子の相同部位と組み換えることによりコピー数の調節がなされると考えられる(Fork Block Dependent Recombination model)。このモデルを証明すべく、本申請研究ではコピー数の調節に必須な配列の決定をその目的に掲げた。本年度はその予備実験としてコピー数の増加に必要な最低コピー数を決定した。酵母野生株にハイグロマイシン耐性のrRNA遺伝子(Hyg^r-rDNA)を持つプラスミドを導入し、同薬剤を含む培地で選択すると、Hyg^r-rDNAは劣性の変異であるため、染色体上に存在する優性の野生型rDNA遺伝子(ハイグロマイシン非耐性)のコピー数の極端に減少した株(1-数10コピー)が多数単離されてきた。それらの株についてその減少したコピー数の回復能を調べた結果、rRNA遺伝子を1コピーしか持たない株は全く回復しなかったのに対し、2コピー以上持つものは全て回復した。このことから増幅には最低2コピー必要であると結論できた。来年度はこの2コピーのrRNA遺伝子にさまざまな欠損を導入し遺伝子増幅に必須な領域を決定する。
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