XPC蛋白質の構造活性相関を解析する目的で、N末端、あるいはC末端を欠失した種々の変異XPC蛋白質を、バキュロウイルス・ベクターを用い、昆虫細胞中でヘキサヒスチジン(6xHis)タグをつけたhHR23B蛋白質と共に発現させた。この昆虫細胞抽出液から6xHisタグを利用した沈降実験を行ない、XPC蛋白質(全長940アミノ酸)の495番から734番目のアミノ酸に相当する部分にhHR23B結合領域が存在することを見出した。また、同様に昆虫細胞抽出液とDNAセルロースを用いた結合実験から、606番から815番目までのアミノ酸を非特異的DNA結合領域として同定した。一方、hHR23Bと結合能を保った変異XPC蛋白質として、N末端の117アミノ酸を欠いたXPC-NΔ117、および735番目、あるいは816番目以降のC末端のアミノ酸を欠失したXPC-CΔ735、CΔ816をそれぞれhHR23Bとの複合体として部分精製したところ、いずれも損傷DNAに対する特異的な結合活性を保持していることがわかった。しかしながら、野生型のXPC-HR23B複合体が、NERに必須の因子で基本転写因子としても知られるTFIIHと相互作用するのに対して、これらの変異XPC蛋白質複合体ではいずれもTFIIHとの結合能に欠損が見られた。さらに、これらの変異XPC蛋白質の無細胞ヌクレオチド除去修復(NER)系における活性を検定したところ、XPC-NΔ117は野生型XPCの約50%の修復活性しか示さず、C末端を欠いた二つの変異体はほとんど不活性であった。このことから、XPCが損傷を認識した後、蛋白質間相互作用によってTFIIHを導入する機能が、NER反応全体の進行に重要であることが強く示唆された。
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