前年度までの組換え蛋白質を用いた無細胞系での実験から、C末端の125個のアミノ酸を欠失した変異XPC蛋白質は基本転写因子TFIIHとの相互作用に欠損が見られ、また無細胞ヌクレオチド除去修復反応においても不活性であることが明らかになった。そこで、この変異XPC蛋白質の細胞内での機能を解析する目的で、XP-C群細胞に変異遺伝子を導入して形質転換細胞株を樹立した。間接蛍光抗体染色により、上記のC末端欠失体、およびN末端の117個のアミノ酸を欠いた変異XPCはいずれも正常に核に移行できることを確認した。しかしながら、N末端欠失XPCを発現する細胞で紫外線抵抗性の回復が見られたのと対照的に、C末端欠失XPCを発現する細胞は親株のXPC欠損細胞と同等の紫外線感受性を示した。すなわち、無細胞系の結果と一致して、C末端部分はXPC蛋白質のヌクレオチド除去修復活性の発揮に必須であることが明らかになった。現在、C末端部分についてさらに細かい欠失変異体を作成しており、今後その構造機能相関を解析していく予定である。また、種々の変異XPC蛋白質を一過性に過剰発現して間接蛍光抗体染色を行なうことにより、XPC蛋白質の核移行に関わる配列をN末端付近に2ケ所同定した。 XPC蛋白質の活性が翻訳後修飾によって制御されている可能性を調べるため、まずXP-C群細胞にHA、またはFLAGタグを付加したXPC蛋白質のcDNAを導入して形質転換細胞株を単離した。これらの細胞株が正常細胞と同レベルのXPC蛋白質を発現していること、また紫外線抵抗性の回復からタグをつけたXPCが正常な機能を発揮できることを確認した。さらに、FLAGタグが特異的な免疫沈降に非常に有効であることを確かめたので、今後紫外線照射前後でのリン酸化の変動等を解析していく予定である。
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