ヒトのGLI3遺伝子に変異が生じると顔面・手足の奇形を伴うGreig syndromeを発症する。また手足の奇形を持つマウスXt(extra toes)変異体はGLI3遺伝子に変異を持つ。転写囚子CiおよびGLIは形態形成において重要な役割を果たすヘッジホグ(hedgehog)シグナル伝達経路上で機能し、BMP/dppなどの標的遺伝子の転写を制御している。しかし、ヘッジホグシグナルがどのようなメカニズムで転写囚子CiやGLIの活性を制御しているのかについては不明である。本研究では、ヘッジホグシグナルがどのようなメカニズムで転写囚子CiやGLlの活性を制御しているのかについて明らかにするため、転写囚子Ci/GLIおよびコアクティベ一ターCBPを介した転写制御を解析した。 GLI遺伝子ファミリーは1〜3の3つのメンバーを有している。私達はCBPがGLI3に結合してGLI3による転写活性の際にコアクティベーターとして機能することを明らかにした。一方、CBPはGLI1には結合しなかった。そして、GLI3のCBP結合ドメインを介した転写活性化能はヘッジホグからのシグナルによって、促進されることが示された。一方、GLI1の転写活性化能はヘッジホグからのシグナルによって影響されなかった。そして、GLI3は直接Gli1遺伝子のプロモーター領域に結合して、ヘッジホグからのシグナルに応じてGli1遺伝子の転写を誘導することが分かった。このように、ヘッジホグシグナル伝達系において、GLI3はシグナル伝達に関与し、一方Gli1はその標的遺伝子であることが示され、GLI遺伝子ファミリーメンバーの間で機能的分担があることが初めて示された。
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