1.再生過程における神経突起の動態を調べるために、ラット上頚神経節細胞培養系を用いてビデオコントラスト微分干渉顕微鏡下で集光したレーザー光を神経突起に照射、突起全体を切断した。切断後、神経突起は退縮を開始した。このうち約半数の突起が切断後1時間以内に再生に転じた。再生時の突起の伸長速度は、切断前の速度とほぼ同じであった。また、枝分かれした突起の片方をレーザー光により切断した際、切断された突起は退縮を開始したが、もう一方は一時的に活動を停止するが退縮することなく成長を続けた。こららのことから、再生過程における細胞骨格の再構成は損傷を受けた突起内でのみ行われることがわかった。 2.神経突起切断後の突起内微小管の性質を知るために、界面活性剤で細胞膜を除去した後に固定、蛍光抗体法により微小管を構成するチューブリンの修飾状態(チロシン化およびアセチル化)を調べた。切断直後の突起内ではチロシン化およびアセチル化チューブリンから構成される微小管がともに観察され、それらの分布は正常な突起内の微小管の場合とほぼ同様であった。切断後5分以上経過した再生前の突起内では、大部分の微小管はアセチル化チューブリンから構成されており、チロシン化チューブリンからなる微小管はほとんど見られなかった。これらの結果から、チロシン化チューブリンから構成される微小管に比べてアセチル化チューブリンから構成される微小管が安定であり、切断から再生までの神経突起の形態を維持する上でアセチル化チューブリンから構成される微小管が重要な役割をしていることわかった。 3.神経突起切断後の再生過程における微小管の分布変化のダイナミクスを調べるために、蛍光ラベルしたチューブリンを細胞内に注入して蛍光観察する実験系を構築した。
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