研究概要 |
我々がクローニングした新規遺伝子aikは染色体分配を制御する遺伝子であるショウジョウバエのAurora、酵母のIPL1と高い相同性を示すことから、aik(Aurora/IPL1-related kinase)と命名した。AikはM期に特異的に発現しており、紡錘体極に前期から後期にかけて局在する(J.Biol.Chem.に発表)。aik遺伝子は、ヒト染色体20q13.2-13.3にマップされた。この領域は、ある種の癌で遺伝子増幅の認められる領域であることが知られており、最近aikが新しい癌遺伝子であることが報告された。そこで本研究では、乳癌症例33例の病理標本を用いてAikの発現を検討した。病理組織型には関係なく、高頻度に癌部が陽性に染色され、良性腫瘍では部分的に弱く染色された(投稿中)。 また、新規ヒトAurora/IPL1-related kinase Aik2とAik3のcDNAも単離し、解析を行った。Aik2はC-末端にAik、Aurora、Ipl1等と相同性の高いキナーゼ領域を持ち、N-末端に相同性の低い領域が存在する。aik遺伝子は、ヒト染色体17p13.1にマップされた。Aik2もAik同様M期に特異的に発現することを明らかにした(Cytogenet.Cell Genet.に発表)。Aik3はC-末端にAik、Aik2等と相同性の高いキナーゼ領域を持ち、N-末端に相同性の低い領域が存在する。Aik3遺伝子は、ヒト染色体19q13.43にマップされた。また、Aik3はAik同様数種類の癌細胞で発現量が増加していた。Aik3もAik1,2同様M期特異的に発現し、後期から終期にかけて中心体に局在した(J.Biol.Chem.に発表)。 現在、AikとAik3の細胞内における機能を、ドミナントネガティブ変異体を用いて解析を行っている。
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