研究概要 |
ヒト蛋白質キナーゼAIK1とAIK2は染色体分配に関与すると考えられているショウジョウバエのAuroraおよび酵母のIpL1と高い相同性を示す。HeLa細胞ではAIK1,AIK2はM期に特異的に発現し、染色体分配および細胞質分裂に関与すると考えられている。ヒトAIKのファミリー遺伝子の存在の検索と機能解析を行い、以下の諸点を明らかにした。 1.AIK3cDNAをクローニングし、遺伝子が19q13.43に存在することを示した。AIK3蛋白質がM期に発現し、細胞分裂の後期から細胞質分裂期にかけて中心体に局在することを明らかにした。 2.ドミナントネガティブAIK1のHeLa細胞での過剰発現によって、前中期で細胞が分裂を停止し、細胞死を起こす。このことから、AIK1は分裂前中期の紡錘体形成と染色体の整列に関与すると考えられる。 3.ドミナントネガティブAIK3のHeLa細胞での過剰発現によって、後期で細胞が分裂を停止し、細胞死を起こす。このことから、AIK3は分裂後期の染色体分配に関与すると考えられる。 4.抗AIK1抗体を用いてヒト乳癌および乳腺良性腫瘍の病理組織標本を染色した結果、33例中31例(94%)で組織病理型に関わらず、ガン組織のみが陽性に染色された。 5.抗AIK1、抗AIK3抗体を用いて大腸ガン組織の免疫組織染色を行った結果、AIK1の過剰発見が78例中53例で(68%)、AIK3の過剰発現が78例中53例(51%)で観察された。 これら3種のヒトAIKファミリーキナーゼが、それぞれどのような蛋白質を基質としてリン酸化するのか、細胞分裂周期および癌化の過程でどのようにかかわっているのかを明らかにすることは今後のきわめて重要な課題である。
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