酵母オートファジーは栄養飢餓により誘導される大規模なタンパク質分解過程である。本研究はオートファジーの誘導の分子機構を明らかにする目的で行われた。オートファジーは富栄皇条件下では誘導されないが、そのとき免疫抑制剤として知られるラパマイシンを培地中に添加することによって、オートファジーが誘導された。ラパマイシンはホスファチジルイノシトールキナーゼのホモログであるTorキナーゼの活性を阻害することが知られている。そこでTorキナーゼの温度感受性変異株を非制限温度化に富栄養条件下で培養したところ、オートファジーが誘導された。このことはTorキナーゼの不活化がオートファジーの誘導に十分な条件であることを示している。 我々はこれまでにオートファジーに必須な分子群Apgを単離してきている。そこでこれらの分子達がTorのシグナルによってどのような影響を受けているかを調べた。Apg8は飢餓条件に応じて、細胞質に均一に広がる構造体から、オートファジーの中間構造体であるオートファゴソームに局在してくることが明らかとなった。さらにTorのシグナルの遮断によって、その転写量が著しく増加した。Apg13は富栄養条件下では、リン酸化されているが、Torのシグナルの遮断により急速に脱リン酸化されることが明らかとなった。その他Apg9は飢餓シグナルによってその挙動の変化は見られなかった。これらの結果からオートファジーの飢餓シグナルに応じた誘導機構の一端が明らかになったと考えられる。
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