研究概要 |
細胞外に分泌されたDAN蛋白質がどのような分子機構を通して、細胞の増殖ならびにがん化を抑制するかについては不明であることから、DANの作用機構を解明する目的で研究を行っている。一昨年、DANはGremlin/Drm,CerberusとDANファミリーを形成するとともに、TGF-βスーパーファミリーの一つであるBMP2に抑制的に働き、アフリカツメガエルの初期発生における背側化因子となり得ることが報告された。(1)BMPの細胞内シグナル伝達は、その受容体およびSmadファミリーを介して行われることから、マウス胚性腫瘍細胞P19を用いてBMP2処理によるSmad1のリン酸化をウエスタンブロット法により検討した。その結果、P19細胞は、BMP2処理(0.01nM,30分)によりSmad1のリン酸化が起こることが判った。現在、DAN存在下でのBMP2処理によるSmad1のリン酸化抑制について検討中である。(2)GST/ラットDAN融合蛋白質を抗原としたマウス抗ラットDANモノクローナル抗体(1F8)を作成した。この抗体が、ヒトDANにも反応することを確認した。今後、血液中のDAN分泌量を測定するアッセイ系に使用可能と思われる。(3)ラット繊維芽細胞3Y1にラットDANを強制発現させた細胞、S9の培養上清よりラットDAN蛋白質の精製を行っている。方法は、硫安分画、Mono-Qカラム(FPLC)、1F8抗体アフィニティーカラムによる精製を検討中である。(4)神経芽細胞腫でのDAN,Gremlin,Cerberus,BMP2/4,BMPRIA,IB,IIのmRNA発現をノーザン法およびRT-PCR法により解析したところ、DANmRNAの発現量は、Gremlin,Cerberusのそれに比べ、有意に高かった。これら細胞ではBMP2,BMPRの発現も認められた。神経芽細胞腫でBMP2処理によるSmad1のリン酸化も検出され、これら細胞でのBMP2シグナル伝達におけるDANの関わりを解析中である。
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