アポトーシスにおける中心的な制御因子であるBcl-2ファミリー蛋白質によるアポトーシス誘導の分子機構を明らかにするため、アポトーシス誘導に重要とされるBH3(Bcl-2 Homology)ドメインに相互作用する細胞性因子の探索を行った。方法としては、BH3を含む最小のアポトーシス誘導性Bcl-2ファミリー蛋白質であるHrkをbaitとし、yeast two-hybrid法によりヒト胎盤cDNAライブラリーのスクリーニングを行った。スクリーニングによって得られた陽性クローンに対しさらにHrkに対する特異性の検討を行った結果、in vivoにおいてHrkに結合していると考えられるcDNAクローン8種類を得た。次にこれらcDNAクローンについてin vitroでのHrkとの特異的相互作用について調べたところ、少なくとも1つのcDNAクローンがin vitroにおいてもHrkと特異的に結合していることが明らかとなった。このクローンがコードする蛋白質はp32と呼ばれHrkと同様にミトコンドリアに局在する蛋白質であるが、その生理機能はいまだ解明されていない。最近このp32の構造が解かれ、3量体からなるドーナツ状のリングを形成していることが明らかとなり、ミトコンドリア内膜においてpermeability transition pore(PTP)と相互作用することによりアポトーシス制御に関わっている可能性が提唱されている。我々の結果はp32がHrkの直接の標的としてアポトーシス制御こ関わっている可能性を強く示唆するものであり、現在p32の種々の変異体を用いてHrk誘導アポトーシスにおけるp32の役割を検討している。
|