Cdc37は、サイクリン依存性キナーゼの活性化に必要であり、またp60v-srcやカゼインキナーゼII(CKII)、sevenlessを含むキナーゼと遺伝的な関係がある。我々は、Cdc37がHsp90とよく似た分子シャペロンの機能を持ち、基質をrefoldingされうる状態に保つ働きがあることを示した。細胞内では、出芽酵母とショウジョウバエにおいて、Hsp90とCdc37の両方に変異を持つ変異株で合成致死などの現象がみられるが、この2つの蛋白質には互換性はない。また、Hsp90の2種類の細胞内基質蛋白質(p60v-srcと転写因子グルココルチコイドレセプター(GR))に対するCdc37の効果を調べると、Cdc37はp60v-srcに対しては働くが、GRには働かない。以上の結果から、我々はこれまでに、Cdc37はHsp90と機能的に共通な部分があるが、Cdc37が細胞内でシャペロン機能を発揮する基質は限られており、主にキナーゼに特異的であることを示した。そこで、本研究では、Cdc37がどのようなメカニズムでシャペロン機能を発揮するのかを明らかにするために、まず出芽酵母中でのCdc37の天然の基質を同定を試みた。Cdc37と遺伝的な関係があるCdc28(サイクリン依存性キナーゼ)との相互作用を検討した。Cdc37とCdc28に対する抗体を作成し、このCdc37の抗体を用いて酵母抽出液を免疫沈降すると、免疫沈降物の中にCdc28が含まれている事を見い出した。また、Cdc37の機能部位を決めるために、様々な欠失変異体を作成した。Cdc37は必須の遺伝子であるが、Cdc37のカルボキシ側の半分を欠いたものでも、酵母は生存可能であった。しかし、いずれの欠失変異体においても、キナーゼとの結合が検出できなくなり、機能部位の特定のためには、点変異を作成する必要性が認識された。
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