平成10年度の計画に従い、ラット肝臓から小胞体局在PDIファミリー蛋白質PDI、ERp61、ERp72の大量精製をおこない、各PDIファミリー蛋白質存在下でin vitro BPTI refoldingアッセイをおこない、その影響を解析した。 これまでに得られた結果は、a)還元型BPTIから成熟型への生成速度を比較したところ、PDI存在下では、反応後2.5分後には成熟型が形成されていることが確認でき、300分後には添加した還元型BPTIはほぼすべて成熟型にrefoldingされていた。ERp61もしくはERp72存在下では、PDIと同様に反応後2.5分後に成熟型の形成が確認でき、BPTIのrefolding反応を促進する能力を持つことが判ったが、PDIと異なり、反応後300分から720分後においても、refolding中間体が残存していた。b)refolding中間体に対するERp61とERp72の作用を直接解析するため、二つのrefo1ding中間体N'(Cys^<30>-Cys^<51>、Cys^<14>-Cys^<38>に二つのジスルフィド結合を持つ)とN^*(Cys-{ys.Cys-Cysに二つのジスルフイド結合を持つ)を精製し、アッセイに用いた。上記と同様に解析したところ、PDI存在下では、refolding反応の律速段階であるN'から成熟型、N^*から成熟型への反応を著しく促進することを確かめた。ERp61あるいはERp72存在下では、PDI存在下に比べ促進活性は弱いがN'から成熟型への反応は有意に促進していた。一方、N^*から成熟型への反応は、ほとんど促進していないことが判った。以上より、PDIはN'およびN^*の両方に作用し成熟型への反応を促進させるが、ERp61およびERp72はN'のみ反応に作用し成熟型への反応を促進させることが判った。
|