申請者らはフィブロネクチン(FN)の選択的スプライシング領域の一つであるEDAの生体内での機能を明らかにすることを目的に、本年度は、対照となるEDAを含まない全長FNを発現するトランスジェニックマウスの作成を行った。まず、FNを時期特異的に発現させるため、テトラサイクリンによって発現が制御されるベクター系を構築した。マウス受精卵に組換えFN発現ベクターをマイクロインジェクションし、これを偽妊娠マウスの子宮内に導入した(トランスジェニックマウス作成は熊本大学鈴木操助教授に依頼して行ったものである)。生まれてきたマウスの尾からDNAを抽出し、PCRおよびサザンブロッティングを行い、導入したFN遺伝子を持つマウスをスクリーニングしたところ、89匹の子マウスのうち25匹が目的のFN遺伝子を保持していた。次に絹換えFN蛋白質の発現を確認するため、トランスジェニックマウスから線維芽細胞を取り出し、テトラサイクリンを含む培地で培養した。培養液中の組換えFN蛋白質量を調べたところ、4匹のマウスから得られた線維芽細胞が、テトラサイクリンによって組換えFNを誘導発現することがわかった。これらのマウスが実際にテトラサイクリンによって絹換えFNを発現誘導するかどうかを調べるために、テトラサイクリンを含んだ飲料水を与え、血漿中の組換えFNの発現レベルをELISA法で調べた。その結果、テトラサイクリンを与えなかったマウスの血漿中の組換えFN濃度は0.05μg/μLであった。一方、テトラサイクリンを与えたマウスでは4μg/μLであった。すなわち、テトラサイクリンによって組換えFNの発現が約80倍亢進することがわかった。以上のように、全長組換えFNを誘導発現するトランスジェニックマウスの作成に成功した。
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