研究概要 |
四肢の形態形成のメカニズムを解明する目的で,肢形態形成に重要である線維芽細胞増殖因子(FGF10)に着目して研究を行ってきた. 本年度は,FGF10機能喪失(KO)マウスを解析し(Nature Geneticsに発表),四肢形態形成におけるFGF10の役割を明らかにした.FGF10 KOマウスには四肢が全くなく,重度のサリドマイド奇形様の表現型(先天性四肢切断症)を呈することから,FGF10が内在性の四肢形成因子として実際に作用していることが証明された.また,本KOマウスでは四肢原基である肢芽は形成されるが,肢芽のシグナルセンターである後部極性化域(ZPA)と外胚葉性頂堤(AER)が全く形成されない.従って,FGF10は,ZPA因子のソニックヘッジホッグやAER因子のFGF8などより上位の四肢形成因子であることが明らかとなった. さらに興味深いことに,FGF10遺伝子が欠損すると肺が形成されないことがわかった.FGF10遺伝子は,肢芽,肺芽,耳胞,皮膚構造物である毛や羽毛の原基など,魚類が地上にあがる際に劇的な進化を遂げたであろうと考えられる様々な器官原基に発現する.少なくとも四肢と肺の形成において,FGF10が最上位の形態形成因子としての機能を担っていることが証明されたことを契機に,FGF10の脊椎動物の形態進化における役割についての解析を現在進めている. FGF10の下位シグナルカスケードについてはRDA(Representational Difference Analysis)法とdifferential display法の両方法により研究が進行中である.
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