研究概要 |
脂肪酸結合蛋白(FABP)が、神経細胞をはじめとする細胞のストレス耐性機構に関与する可能性を検討するために、脳型(B-)と皮膚型(S-)FABPについて、形態学および細胞生物学的手法を用いて種々の研究を行っている。以下にその結果と研究経過を示す。 1 S-,B-FABPの軸索損傷モデル、カイニン酸誘発痙攣モデルおよび一過性前脳虚血モデルにおける発現検討では、 i)S-FABPが舌下神経損傷後の舌下神経核において発現増強を示すこと。 ii)両FABPの遺伝子・蛋白発現は、カイニン酸誘発痙攣脳のアストロサイトにおいて発現増強を示すこと。 iii)一過性前脳虚血脳においては両FABPの発現に変化が認められないこと。 が判明した。 2 B-およびS-FABPのPC12細胞あるいはHL60細胞への強制発現株樹立については、安定強制発現株の選択が可能な発現ベクターの作製が終了し、細胞への遺伝子導入を施行している。併せて両FABP分子のアンチセンスオリエンテーションcDNAの細胞導入も行っている。 3 FABPが細胞のストレス耐性機構に担う機能をin vivoレベルでより詳細に検討するため、S-およびB-FABP遺伝子欠損マウスの作製を進めている。両分子のマウス型遺伝子の単離と構造解析、さらにこれらを用いてのtargetingベクターの作製はほぼ終了している。
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