アラキドン酸などの長鎖脂肪酸は、神経細胞の種々の生理機能に関与することが既に知られている。本研究期間で我々は、長鎖脂肪酸の細胞内キャリアーである脂肪酸結合蛋白(FABP)の神経系細胞の分化および細胞死に関する生体機能を明確にするために以下の実験を施行した。 <実験> 1)皮膚型FABP遺伝子欠損マウスを作製し神経系の発達異常の有無を主に形態学的手法を用いて検討した。 2)皮膚型FABPの遺伝子・蛋白レベルの発現誘導が証明されている舌下神経軸索切断モデルを用いて、ノックアウトマウスと野生型マウスの比較から、舌下神経核運動ニューロンの形態学的解析を加えた。 3)脳型FABP遺伝子欠損マウスの作製に着手した。 <結果と進行状況> 1)皮膚型FABP遺伝子欠損マウスは正常に発育し、神経系の形成異常などはこれまでのころと観察されていない。 2)舌下神経切断後7日における解析では、ノックアウトマウスと野生型マウスの間に有意な運動ニューロンの光顕的変化は見られない。 3)脳型FABP遺伝子欠損マウスの作製は、現在ES細胞の選択を終了し、キメラマウスの作製を行っている。
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