本年度は、逆行性トレーサー(WGA-HRP)、順行性トレーサー(PHA-L)をラット前海馬台外・内固有層、および前海馬台に隣接する29e野に注入し、標識細胞・標識線維、終末の分布を完全連続切片上で解析した結果、以下の新知見を得た。 1) 前海馬台II層には前海馬台長軸(中隔-側頭葉)、短軸(遠位-近位)方向に広範囲に渡る内部結合が存在する他、29e野II層とも強い結合関係を有した。各結合は両方向性であり、両側とも多量に存在した。前海馬台II層の内部結合細胞には、中隔側から側頭葉側へ一方向性に長距離投射するものと、両方向性に短距離投射するものとがあり、前者は中隔側端に限局し後者は近位端を除く前海馬台全域に多数分布した。 2) 前海馬台V層へは前海馬台および29e野のII層細胞から入力があり、特に後者は長軸・短軸方向に広範囲に渡り多量の投射線維を送ることが明らかとなった。各結合はいずれも両側性であった。これに対しV層からII層への投射は確認されず、II層-V層の層間結合はII層からV層への一方向性と考えられた。 3) 前海馬台V層内部には、長軸・短軸方向に限局した内部結合が存在した。この結合は両側性だが、圧倒的に同側優位であった。 これまでの前海馬台外固有層の入出力結合関係の解明に加え、内固有層の結合関係を解明するという本年度の研究目標は達成されており、現在上記の知見について論文を投稿準備中である。次年度はこれに引き続き、傍海馬台外・内固有層それぞれについてWGA-HRP、PHA-Lを用い入出力結合を解析する計画である。
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