研究概要 |
マウスエイズモデルとして知られるレトロウイルス(immunosupressive murine leukemia virus,LP-BM5)感染マウスを用い、体重、組織重量(脾臓、肝臓、リンパ)、フローサイトメトリーを用いた脾細胞のB220,CD4,CD8陽性率の変化、LPS刺激に対する脾細胞のチミジン取り込み量の変化などの種々の免疫機能、さらにはそれらのマウスを用いた行動薬理学的試験(water maze test等)を行い非感染マウスとの比較を行った。その結果、LP-BM5感染10週後において、体重はコントロール群に比べ有意の増加を認め、さらに脾臓、肝臓、リンパ節重量も著名な増加が認められた。脾臓細胞のB220,CD4,CD8陽性率さらにはLPS刺激に対する脾細胞のチミジン取り込み量もLP-BM5感染群で有意に変化し免疫不全を示す結果が得られた。さらに、行動薬理学的検索ではRotarod testでは全く差が認められなかったが、Y-maze test,Water finding test,Water maze test等の試験においてコントロール群に比べLP-BM5感染マウスで有意差が認められた(J.Neuroimmunology,in press)。以上の結果はエイズ患者末期に見られるAIDS dementia complex(ADC)のモデルとしてLP-BM5感染マウスが極めて有用な実験動物モデルであることを示している。現在、TNF-αノックアウトマウスとwild typeマウスとの比較を行いADC発症の機構に関して広範囲にわたる検索を行っている。上述の通り、この研究課題は計画通り順調に進んでおり、来年度にはADCにおけるTNF-αの脳内での生理的意義等が明らかになるであろう。
|