結節性硬化症は乳幼児期に発症し、難治なてんかん発作、知能障害、皮膚病変などを生じる常染色体優性遺伝性疾患としてよく知られている。この疾患の原因遺伝子の1つであるTSCl遺伝子は、9番染色体に座位し、hamartinをコードしている。この蛋白は腫瘍抑制機能が予測される一方、これまでに明らかになった他の腫瘍抑制遺伝子との相同性は明らかでなく、その機能の詳細はいまだ不明である。しかし、結節性硬化症のもう1つの原因遺伝子であるTSC2遺伝子はtuberinをコードしており、このtuberinは、腫瘍抑制因子としての働きが次第に明らかにされつつある。海外の報告例も含め、これまでのところ両遺伝子の変異を持つ患者間に臨床症状の相違は認められていないので、両遺伝子は同様の腫瘍抑制作用を持つと予測される。そこでいまだ明らかにされていないTSCl遺伝子の産物であるhamartinの機能を解析し、特に中枢神経での発現を検索することにより、この疾患の最も主要な症状である脳内石灰化、ひいてはてんかん発作、知能障害の病態を細胞レベルで解析することを目的とした。本年はまず臨床的に結節性硬化症と診断された症例の末梢血から抽出したDNAからTSCl遺伝子をPCR法により増幅し、ベクターに組み込み塩基配列自動解析装置によりTSCl遺伝子の解析を行い、数症例において遺伝子変異を同定した。この異常はこれまでに報告のない、新しい変異であった。今後はこれらの変異を導入した神経細胞の培養系を樹立する
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