研究概要 |
後根神経節に特異的に発現しているH抗原(Fucα1,2Gal)の発現調節機構および神経機能における意義を解析するため、H抗原生合成を司るα1,2フコース転移酵素遺伝子の発現を調べた。ウサギ中枢神経系の領域ごとにRNAを抽出し、3種類存在するウサギα1,2フコース転移酵素遺伝子の発現を検討したところ、胎生後期には3種類全ての発現が認められ、生後はH型α1,2フコース転移酵素遺伝子(RFT-I)が後根神経節特異的に発現していることが明らかになった。in situ hybridization法によってRFT-Iが後根神経節小径神経細胞に豊富に発現していることが示され、UEA-1レクチンの認識する糖タンパク質上のH抗原およびfucosyl GM1の分布と対応することが確認された。そこでRFT-I遺伝子の転写調節機構を詳しく調べるため、RFT-I遺伝子のゲノム構造および転写開始点を解析した。3種類存在するRFT-I遺伝子の転写産物のうち、後根神経節特異的な転写産物の転写開始点が翻訳開始点より82bp上流にあることを決定した。更にこの転写開始点の上流部分を取りだし、ルシフェラーゼ遺伝子につないでプロモーター活性の検討をおこなった。ウサギ後根神経節神経細胞の初代培養系などを用いた解析により、翻訳開始点より上流約700bPに強いプロモーター活性が認められた。この領域内には幾つかのSp1結合部分やNGFなどの神経成長因子によって誘導される転写調節因子の結合部分(GSG-element)が認められ、機能していることが確認されたが、後根神経節神経細胞特異的なプロモーター活性にはそれらのみでは不充分であることもわかった。今後この700bpのプロモーター領域に結合する未知の転写因子を同定する予定である。
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