研究概要 |
後根神経節の小径神経細胞に特異的に発現しているH抗原(Fucα1,2Gal)は、ウサギにおいては主にH型α1,2フコース転移酵素遺伝子(RFT-I)によってその発現が調節されていることを、昨年度までに明らかにしてきた。ウサギ後根神経節神経細胞の初代培養系などを用いたプロモーター解析により、RFT-I遺伝子の翻訳開始点より上流約700bpを後根神経節神経細胞に特異的なプロモーター領域として同定し、更にこの領域内に幾つかのSp1結合部分と、神経成長因子によって誘導される転写調節因子Egr-1の結合部分(GSG-element)を見いだした。しかしこれらの転写調節因子のみでは、後根神経節神経細胞に特異的なRFT-I遺伝子の発現に不充分であることから、新たな転写調節因子の同定を目指して今年度の研究を行った。約700bpのプロモーター領域を酵母レポーター遺伝子の上流に結合して酵母に導入し、One-hybrid systemによってウサギ後根神経節cDNAライブラリーをスクリーニングした。しかし、この方法ではポジティブクローンが得られなかったため、手法を改良し、Sp1あるいはEgr-1タンパク質を予め酵母内に発現させた上で、上記のスクリーニングを施行した。その結果、幾つかの候補となる遺伝子が得られたので、現在それらの塩基配列の決定および転写因子であるか否かなどの検討を行っている。一方、糖鎖抗原と感覚神経細胞の機能維持との関連を探る目的で、GDlbガングリオシド感作による末梢神経障害モデルを用い、神経栄養因子受容体trkA・trkCの発現を定量し、このモデルにおいて極く早期の段階からtrkCの発現量が減少していることを見いだした。糖鎖抗原に対する抗体によって、神経細胞維持に必要な情報伝達がブロックされる可能性を示した。
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