本研究は、細胞外刺激により産生されるイノシトール3リン酸(IP_3)の結合により開口するIP3受容体(IP_3R)/Ca^<2+>放出チャネルの、チャネルポアを形成する領域および四量体会合に関与する部位の同定を目的とし、本年度は以下の成果を得た。 1、 細胞膜上に存在するイオンチャネルとの構造上の類似点に基づき、マウスIP_3Rのイオンチャネルポアを形成と推定される部位、および推定膜貫通領域に点変異もしくは欠失変異を加えたIP_3Rを作成した。 2、 内在性のIP_3Rを遺伝子ターゲッティングにより欠失させたニワトリB細胞由来の細胞株R23-11に外来性に導入したIP_3Rタンパク質を発現させる系を確立し、野生型マウスIP_3Rを安定に発現する形質変換株を得た。 3、 IP_3R多量に発現しているマウス小脳の膜画分を用いてIP_3Rを人工脂質二重膜に再構成する系を確立し、マウス小脳IP_3Rのイオンチャネルとしての性質(リガンド依存性、イオン透過性、平均開口時間等)の電気生理学的測定を可能とした(投稿準備中)。 以上の成果をふまえ、来年度は以下の項目について解析を行う。 1、 作成した変異IP_3Rを安定に発現するR23-11細胞を遺伝子導入法により作成する。 2、 R23-11細胞で発現させた変異受容体を人工脂質二重膜に再構成し、それぞれの受容体の電気生理学的な性質、特にイオン透過性を測定することにより、イオンチャネルのポアを形成する部分の同定を試みる。 3、 変異受容体の四量体形成能を、電気泳動やゲル濾過、密度勾配遠心などにより測定し、四量体形成に必要な部位の同定を試みる。
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