研究概要 |
シナプス前活動電位の大きさと形は、カルシウムイオンの流入量を調節して前終末からの伝達物質の放出を調節すると考えられる。しかし、脊椎動物、特に哺乳動物を使っての研究は、シナプス前終末が細く直接記録することが困難なため、シナプス前終末の神経活動については、主として間接的な実験結果から推測していた。今回、電位感受性色素を用いた光学的電位測定法をラット脊髄切片に適用し、興奮性アミノ酸受容体拮抗薬(AP5+CNQX)を還流投与するとシナプス後応答は阻害され、シナプス前終末で起きる電位(シナプス前活動電位)が光学的に記録できることを示した(Ikeda et al.,1998)。 カルシウムイオンの流入量は、シナプス前活動電位のカルシウム電流による成分を調べることでに間接的の測定することができる。まずそれを、カルシウムチャネル阻害薬のカドミウムあるいは外液中のカルシウムイオンを除去することで調べてみた。カドミウムは0.1mMの低濃度でも30分以上投与するとシナプス前活動電位が徐々に小さくなってしまい、カルシウムチャネル以外にも作用してしまうが、外液中のカルシウムイオンを除去する方法はシナプス前活動電位を長時間安定に記録できることがわかった。また、いずれの方法でも、シナプス前活動電位の再分極がおもに影響を受け、カルシウムの流入は活動電位の立上りではなくピークをすぎたころに発生していると考えられる。 今後は、カルシウムイオン濃度を直接測定するように現在のシステムを改良し、カルシウム測定のための色素についてもいくつかのものを試していく。
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